過去に2度ほど訪問する機会がありながら、飛行機の欠航などで訪問できなかった
スペイン南西部にあるセビリアという都市に世界最大の木造構造物が有る。

2011年に完成した市場やショッピングセンター、レストランを設けた多目的な広場に架かる大屋根だ。地元では巨大なキノコとしても知られている。

そのスケール感と構造のディテールが自分の目で見たくて訪問することにした 2024.10.16。
屋根に架けられた歩道は緩やかなカーブと勾配を伴い、セビリアの町並みを一望できる、世界遺産にも指定されている旧市街地にあるこのキノコ賛否両論あるだろうが、私は意外と溶け込んでいて良いなと思う。
ちなみにメトロポール・パラソルの概要は
建築面積:5000平方メートル
延床面積:12670平方メートル
階数 :4
建物の高さ:28.50メートル
総工費: 9000万ユーロ(約105億円)


デザインはドイツの建築家ユルゲン・マイヤーが設計コンペで優勝し革新的で、フィンランド産の白樺材を使用し強力な接着剤で接着され合板にされている、現状と塗装で保護されている。構造設計はArup
後日、ノルウェーのオスロで芝屋根の建物を沢山見たが、何れも白樺の樹皮を使い屋根の防水が行われていた。
白樺は北欧の各地で生息し、北欧ではトウヒ(唐檜)や松に次いで多く存在する、最も一般的な樹木の一つだ。いつも暮らしのそばにあった白樺、特にその樹皮は優れた性質を持ち、長らく工芸品というよりは、暮らしの道具をつくるために欠かせない素材だった。
防水性、抗菌性に優れ、品質が劣化せず腐敗しにくい性質を持っていて、屋根用資材としても使用でき、また牛乳や食品などの保管にも使われてきたようだ。


現物を見ての感想だが、とにかくデカい、映える。
木造とはいえ、木目は全く見えない、分厚いシートを貼り塗料で絶対腐らないように塗装されているようだ、それととんでもないくらい多量の接合金物の数、2011に完成なので当然BIMによる設計だろうが、接合部金物のディテールの種類も豊富だ、よく見ると現場で調整した苦労の跡も見ることができる。
以下に実際の写真を添付しますが、これが木材とは誰も思わないし、私だったら白樺の木をわざわざ合板にする意味が無い気がしてきました。


各部材は3mm厚のシートを接着し包まれ、さらにエポキシの塗料で塗装されている


合計4,000個の接続箇所があり、全て異なる形状である。








屋根はシート防水

確かに木だろうけど木目は無いし。
地震の無い国で構造計算も水平力を考慮しなくて良いのだろう、これを日本でやろうとするとさらに大変なことになる、ザハの新国立競技場の案が没になったのも、彼女の頭の中に日本が地震大国であることが抜けていたのかもしれない。
しかし百聞は一見にしかず、見学者が少なかったのでゆっくりとディテールまで見ることができたのはうれしい。
考古学博物館の設計変更や大雨などのため、工事は当初より遅れがちであったが、最大の障害は、建築家も施工会社も木材の固定方法を見つけられずにいたことである。コンペ案の作成からオブ・アラップ社は構造計算に携わっていたものの、設計の初期段階ということもあり、十分な検討がなされていなかったのである。
見学コースには建設の過程をパネルにして飾っておりました、なるほどこうやってできて行ったんだなと理解できます。

工事中に古代遺跡が出てきた、地下部分は設計変更し展示スペースとなった。

パラソルを支える柱の立面 2007/4

マヨール広場での建設 2008/3

プラットフォームのクローズアップ 2008/7

ドイツの工場で加工組み立て 2008-2010

マヨール広場にジョイント部品をストックしました

パラソルの柱部分とパーツの組み立て開始 2009

マヨール広場での資材の集積状況

木製のパーツを屋根とレベルまでつり上げる

屋根のキャノピー組み立て作業 2010

展望台の組み立て 2010

鋼製トラスの組み立て

木製の屋根構造物の組み立て

仮設足場の撤去 2011

ラス・セタス・デ・セビリアの落成 2011

屋根のメンテナンス工事 現在

セビリアのキノコの空撮

この構造物には1,600万本のネジとボルトが使用されています。

写真の筋交い状のバーは引張り力に強く、構造全体に必要な水平安定性を保ち、各グリッドが菱形に変形するのを防いでいます。

壁柱脚部に使用されている金物は引き抜き力に対しても大きな抵抗を持つ。



構造部材の断面と塗装の状況

とにかく凄い量の金物とビス・ボルト


6本有る柱の形状①

②

③

④

⑤

⑥