NM邸リノベーション 築44年住宅の再生
寒い家を暖かく、弱い家を丈夫に。
断熱・気密工事が終わりました。
まずは耐震診断、築44年となると普通だと建て替えましょうとなるが、当物件はなんとかリノベーション出来ないかと言うご相談。
実はこの建物の南に現在居住されている住まいがありそちらも老朽化が激しく日当たりも悪い、色々考えた結果、当建物をリノベして南に建つ母屋を壊す、そうすると大きな庭が出来、陽射しもしっかりと確保出来る。
そんなご相談から、出来ます、出来ると思いますと返事をしてしまった。
過去に築41年の住宅のリノベーションも経験しているので、リスクも大体想定出来る、
まずは耐震診断兼現況調査をしましょうと言うことに。
調査に基づき、耐震診断を行います。
結果は想定内です、築41年だとこんな物です。
気になったのが床下調査における基礎高さの不足、さらに外部より50mm程度下がっていることが判った。
そして基礎の隅角部に謎のしみのようなもの、直感で蟻道の跡かと思ったが蟻道は見えない、何なんだろう?
そして柱が細い、90mmを切れているカ所もある、何せ基礎の強度はなさそうだ。
そして、補強設計の概要は、
①まず軽くする-屋根の瓦を降ろしガルバリューム鋼板を用いた軽くて耐久性のある物に替える、
と同時に②外壁のモルタルも撤去し、構造用合板にて外周部を全て補強し、通気層を取りガルバリューム鋼板にて仕上げる。
③壁量を十分満足させさらに屋根・2階床の水平構面の耐力を向上させる、これは地震時に捻れて倒壊することを防ぐのに有効な補強方法です。
④基礎の強度はどう考えるか、基礎を補強するのは大変お金が掛かります、今回は既存部分の立ち上がり補強は止めました、その代わり南側に3尺増築する基礎を強固な物とし、耐力をそちらでかなり負担させる、また基礎たかが低く外部より内部が低い件に関したは、内部に防湿コンクリートを打設し内部が50mm高くなるようにする、つまり防湿と防蟻を兼ねた土間コンクリートになります。
基礎を補強しなくて良いのか?と思われるでしょうが、耐震補強の計算方法においては確かに基礎を補強すれば丈夫になるが、それをしない場合基礎が弱いという低減をかけて補強強度が計算されますので、基礎から上の上部構造をがっちりとマッチ箱のように補強して持たせるという考えも成り立つのです。
木造の耐震補強は、木造のことをよく知っている実務者が、国の計算基準に則り、計算することが重要です。昔のように、「俺に任せておけば、地震が来てもへっちゃらだよ!」的なKKD(感・経験・度胸)的な定量的な根拠の無い補強は絶対に避けなければいけません。
さて補強計算・補強設計に基づき解体が始まりました。
事前調査では判らなかった問題点がたくさん出てきます。これが現実です、でも木造の実務者であれば想定内として対応が出来ます。
梁も柱も細いです、でも42年間降雪にも地震にも耐えてきました。
柱と梁の接点の接合金物はありません、本来あるべき梁がありません、柱が、土台がシロアリにやられてました。ここは事前には絶対見えない場所でした。
解体が始まるとほぼ常駐で補強方法の設計変更をしなくてはいけません、もちろん現状に合わせた耐震計算は何度も繰り返されます。